引っ越し当日。
彼は当直明けで、その足で車を飛ばして、邸宅に来た。
「引っ越し業者の到着時間は確か十一時だったな…」

「はい」

「じゃそれまで…少し寝ていいか?」

「いいですけど」

「お前のベット借りるぞ」

隼也さんはベットの布団を捲り、中に潜りこんでしまった。

「お休み」

「隼也さん!?」

彼は一瞬で夢の世界に入り込み、泥のように眠ってしまった。
「隼也さん」

彼は私の声に全く反応しない。

私の引っ越しの為に、他のドクターと当直を交代し、二日連続、ほとんど眠らず搬送されて来た患者さんの命を救った。

その証が不精髭と汗と薬品の匂いが染みついたカラダ。

引っ越し業者の人が来るんだから、少しは小奇麗して欲しいけど、仕方がない。