HONEYBEE(1)~アラフォードクターと一夜から始まる身代わり婚~
まずはノンアルビールで乾杯した。
「今日はお疲れ様でした。隼也さん」

「あ…お前こそ…これからもよろしくな。瑞希」

「こちらこそ不束な者ですが…よろしくお願いします」

「よろしく」

二人でグラスを重ね、リーズナブルだけど本格的なフレンチのコースを食していく。

「美味しい」

「本当はこの店…相馬先生が教えてくれたんだ」

隼也さんは前菜のテリーヌを口に運び、早速ネタバレした。

「知ってますよ…」

「えっ?お前…まさか…電話盗み訊きしてたのか?」

「隼也さんの声…大きいから…聞こえたんです」

「・・・そっか…何だ最初から知ってたのか…」
隼也さんは頬杖を付き、グラスのビールを飲み干した。

「ビール追加します?」

「ん、あ…後でいいよ。俺、こういう所がいけないんだ」

「えっ?」

「・・・だから、モテるのに残念な人になるんだな…」

「今からモテたら、困ります…」

「そうだな…俺には瑞希という妻が出来るからな…」

妻…その響きに鼓動が速くなり、嬉しさがこみ上げた。

こうして、私と彼は夫婦となった…



< 67 / 262 >

この作品をシェア

pagetop