人形を抱く女性

「でも、ここで電車に跳ねられて死んじゃったの」


わたしは大きな勘違いをしていた。


あの言葉は彼女自身のことだった。


あの女性は死んでいた。みんな無視してたんじゃなく、わたしにだけ見えていた。


でも、なぜわたし? 


わたしにはそう言った力はないはずだよ。


母親はさっきのニュースの事などすぐに忘れた様子で、


「あ、明日、おばあちゃんのお見舞いの日だから、あんたも一緒に行くんだぞー」


半ば強制的な声色で話した。


(明日、また駅に行く。彼女はいるだろうか。わたしを待っているのなら、なぜ?)


きっといくら考えても答えは出ない。


今のわたしはあなたに会いに行くしかない。


そして、わたしだけに見える理由を教えてほしい。


「うん、わかった」


それだけ言ってわたしはその場を離れた。


部屋に戻って、さっき流れていたニュースの映像を改めて見た。


彼女が線路に落ちていく姿。


ホームに立っている娘さんの姿。


わたしは何度も見直した。

何度見ても心の痛む映像だった。
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