毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


それに、『笑顔を作らなくていい』って。
彼はそう言った。


愛想のいいかれんちゃんにとって、笑顔は自然と浮かぶ、浮かべるものであって、決して作るものではない。

そう思って自然になるように演じてきたし、周りにもバレたことなんてないはず。

こんなろくに関わったことも無い相手ならなおさらのこと。バレるわけがない。


私の考えすぎなのか?
単なる言葉のあやなのかもしれない。


「『は?』って……ふふ。やっぱり偽物なんだね。それより、制汗剤使わないの?僕が先に使っちゃうよ」


凄く引っかかる言葉を口にしたが、制汗剤を借りている身としては大人しく相手のペースに合わせなければマナー違反というもの。


それに、ここでそのことをついてしまえば返り討ちにされそうな気がする。


にっこりと綺麗に笑っているのが余計に恐怖心を煽るのだ。


「ありがとう。使わせてもらうね」


とりあえず今は聞かなかったことにして平常心を装い、王子様と同様に爽やかな香りの液体を手に取り出して肌に沿わせた。


はー、涼しい。
さっきまでの不快感が見事に消え去っている。
シトラス系の香りを選ぶところが王子様らしいといえる。


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