雲居の神子たち
身代わり計画
「巻き込んでしまって、すまない」

街に入りもうすぐ目的の家が見えるようになったころ、石見が口にした。
歩みを止めるわけでなく、前を見たままつぶやかれた言葉。

「もう、いいんです」
私はためらうことなく返事をする。

誘拐されたのは運命。
でも、白蓮の身代わりとなると決めたのは私自身。

「どんなことをしても、助け出すから」
「はい」

今は、尊と石見を信じている。


尊が立てた計画。
それは、頃合いを見計らって火事を起こそうというもの。
住居の方は男一人が住んでいるとはいえ、渡り廊下でつながった店舗には多くの使用人がいるし、町の知名人であれば用心棒だっているかもしれない。
具体的にどのタイミングで、どんな風に火事を起こし私を助けるつもりなのかはわからないが、「お前が一人になったタイミングで火事を起こす。完全に火が回る前に必ず助けに入るから待っていてくれ」そう言われた。

不安がないわけではない。
それでも尊と石見を信じるしかない。
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