運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
運命
まぶしいほどの日差しを浴びながら、一歩一歩小高い丘の上を歩く。

手には花束。

男の子でも女の子でもいいように、黄色やおれんじの花で作られた花は、亡くなった我が子のためのものだ。


元気に生まれることができなかった我が子。

毎年、命日にはこうして丘を登り、眠っている墓地へ向かう。

こうして命日にここに来るのは今年で2回目だ。

命を失ってから3年。

元気に生まれることを信じてやまなかったあの頃の感情を思い出す。
それだけで、少し幸せな気持ちになれるのは、それだけ、たとえ失った命でもほんのひと時でも、幸せすぎる時間を味わったからだ。
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