愛しても、いいですか

嵐の前の静けさ

翌週月曜日。
土曜日に買ってもらった洋服に袖を通し出勤の準備をしていると、コンコン、と部屋をノックする音が聞こえる。
はい、と答えるとドアの向こうから、

「沙耶香ちゃん、支度が出来たら車で送っていくよ」

と言われる。慌ててドアを開け、

「…いや、大丈夫です!ここからなら1駅で会社に着きますし大石さんも忙しいでしょうし」

と答えると、

「…沙耶香ちゃん、人に頼る練習は?」

すっ、と目を細めてじっと見つめられる。
…そうでした…でも何か慣れないなぁ。
頼るというか甘やかされている感じがする…

「…ワカリマシタ、オネガイシマス…」

悔し紛れに片言で言えば、ははっ、と面白そうに笑ってよろしい、と満足そうに頷き、私の格好を見てやっぱり可愛い、そう呟いてリビングに帰っていった。
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