三橋さんに着いて東京に行く、と決めたものの、いくら個人事業主でも仕事を放り出してその日のうちに……なんてのは無理なわけで。
次回、三橋さんが東京へ戻るときに一緒に行くようになった。

「かーさーん。
じいちゃんが作ってくれた訪問着、どこだっけー?」

実家の和箪笥をごそごそと漁る。
成人のお祝いに、コーラルピンクの地に四季の花を描いた訪問着を祖父が作ってくれた。
若いときはもちろん、こういう色は年取っても顔に映えていいんだ、なんて照れながら渡してくれたそれをいま、着るときだ。

「鹿乃子、なに探してるんだ?」

通りかかった祖父が、部屋の中を覗く。

「じーちゃんが作ってくれた訪問着」

「なんだ、結婚式にでも出席するのか」

その反応は正しい。
訪問着を着ていくところなんて最近は、それくらいしかない。

「違うよー。
三橋さんのご両親とたぶん会うことになるからー」

和箪笥の中はカオスだった。
だいたい、祖父も父もなにかと記念日やなんかに着物を作ってはプレゼントしてくる。
成人式はもちろん、祖父の作った振り袖だったし、大学の卒業式は父の作ってくれた小振り袖だった。

……ん?