翌朝、着物の準備をしながら気づいた。

「鹿乃子さん。
一緒に店へ……鹿乃子さん?」

様子がおかしいのに気づいたのか、三橋さんの声が少し、心配そうになる。

「どうか、しましたか?」

「三橋さん!」

「はい?」

状況が状況だけに、私が思い詰めていて彼は不安そうだ。

「私、自分で二重太鼓に結べないの、忘れてました……!」

抜かった。
名古屋で一重太鼓なら手慣れたものでささっと結べる。
がしかし、二重太鼓は結べない……というより、結んだことがない。
袋帯できっちり装わなければいけないとき=重要な行事なので、そういうときは着付けてもらうから。

「ああ、そんなことですか」

「そんなことって大問題ですよ、これは!」

今日は三橋さんのご両親と対決だから、祖父の作ってくれた着物を着たい。
しかしながらあれには袋帯を締めなければならないのだ。

「近くに着付けのできる美容室……」

携帯で探そうとしたけれど、すぐに止められた。

「心配はご無用です。
私が、できますから」

「……え?」

ちょっと意味がわからなくて、彼の顔を見上げる。