東京に来て四日目は水曜日だった。
予定では明後日、金曜夜の新幹線で金沢へ帰ることになっている。

「鹿乃子さん。
今日のお客様は午前中に一件だけですし、午後から少し、お出掛けしませんか?」

朝、トーストを食べながら漸が訊いてくる。
フライパンでパンを焼くのは悪くないがやはりトースターはあった方がいいと思うし、カップひとつをふたりでシェアするのも若干、つらい。
なので買いに行きたいと思っていたので、いいかも?
あ、いや、私はあと何度、ここに来るのかはわからないけれど。

「はい、かまいませんが」

「鹿乃子さんに紹介したいお店があるんです。
きっと、お役に立つと思います」

カップが空になったので、新しいコーヒーを漸が淹れてくれる。

「あ、はい。
わかりました」

そうか、漸は私に、この東京滞在をただ、ご家族との対決だけで終わらせず、実りあるものにしてくれようとしているんだ。
やっぱり漸は、優しいな。

「お昼も本当はご一緒したいんですが、たぶんお客様と同伴になりますので……」

ははっ、と小さく笑い声を落とした漸は、少し泣きだしそうだった。