クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
雪解けのように
 
 遥人さんへの想いを自覚した翌日は雨だった。

 私の代わりに空がまだ泣いてくれるのかと、感傷的な考えを浮かべるほどには病んでいる。

 自転車通勤の私と姉は、雨が降るとバスを利用する時もある。

 家からバス停まで歩いて十分。バスに揺られて十五分。到着してからロイヤルライフ星が丘まで五分。

 こんな感じで、自転車だと二十分のところがバスだと三十分かかる。

 そこまで時間に差はないが、自転車の方が楽なので小雨ならレインコートを着て自転車に乗る。

 今日は雨脚が強いので姉はバスを利用するそうだ。まだ準備している姉に行ってくると告げて、先に家を出る。

 昨夜は姉に、やけ酒に付き合ってもらった。といっても私はそこまで飲めないので、すぐに睡魔に襲われて寝たのだけれど。

 余裕を持って家を出たので、バスの到着時刻まで五分ある。

 足元を濡らす雨粒に目を向けると、私の心まで水の中に沈んでいくようだった。

 目の前の幹線道路を車が水しぶきを上げながら走り抜ける。見知らぬ車なのを確認して息をついた。

 遥人さんは私の要望を聞き入れなかった。
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