褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「『取り返しのつかないことをしてしまった』って、あいつすっげー悔やんでた。酷いこと言っちゃったけど、本当はお前のことが好きだったんだって」



何それ……。
どうして今更そんなことを言うの?

私だってずっと好きだったのに、ずっと苦しんできたのに。

……最後まで嫌な人でいてほしかった。



「今更言われても……」

「だよな。許せるわけねーよな。だから俺、『俺にしたことは許すけど、実玖を傷つけたことは許さない。もう2度と実玖に会うな』って言ってやった」



「だからもう安心しろ」とドヤ顔をした兄。
今ので少し胸のつかえが取れた気がした。



「あと最後に、『彼氏と幸せに』ってさ」

「えっ……?」



彼氏? それって……西尾先輩のこと?

もしかして、服の色が似ててペアルックみたいだったから、カップルだって思われた⁉



「今日、東馬と一緒にいたんだろ?」

「なんで知ってるの⁉」

「俺がそもそも東馬にデートを勧めたんだよ。デート楽しんでるかなって、1回電話したんだよね」



電話……あの時か!

だから変に焦ってたんだ……!



「お兄ちゃんが仕組んだの⁉」

「失礼な。協力してあげただけだよ」



そう言い残して階段を下りていった兄の後を追う。

夕食後、「先輩に何を吹き込んだの⁉」と問い詰めたのは言うまでもない。
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