「はーちゃん⁉」

大丈夫⁉ とさくらが布巾を手に駆け寄ってくる。

来るな、と言いたいけど、思いっきり気管に入った麦茶のせいでげほごほと咳しか出ない。
かろうじて健吾からの『プレゼント』は封筒の中に戻せた。

戻せたが………

餞別? ファイト⁇
コレで、俺に何をファイトしろと⁇⁇

いや、コレの使い道なんて一つだ。
それは分かってる。

問題は、誰に──誰と、と言うべきか?
健吾はコレを、俺に、誰と使えと、言っているんだ⁇

げほごほしながら脳内ぐるぐるしている俺の足元では、さくらが割れはしなかったコップを拾い上げて床を拭いている。
俺がやるから良い、と言いたくても咳き込んで言えないから、さくらの肩を掴んで首を振って見せる。

「でも……あ、服も濡れちゃってるよ」

拭くから待っててと、さくらが流しで布巾を洗ってる間に何とか落ち着いた俺はダイニングテーブルの上に置いてあったスマホを引っ掴む。
健吾にメッセージを送ろうとしたら、さっきのレスが届いてた。

『俺今日と明日は歌乃ん家に泊まるからいない! あと姉ちゃん今傷心中だから』

──は? 傷心中⁇

と一瞬固まったものの、『それよりこれはなんだ』と送ると、すぐに既読が付いた。
戻ってきたさくらが俺の服を拭き始める。

「さくら、良いよ。自分でやるから……」

ぴろ~んと呑気な音が鳴ったから、急いでメッセージを開く。

『だから、餞別だって。姉ちゃん慰めるチャンスだよ』

な ぐ さ め る ⁉

って事はやっぱあれか⁉ コレは俺が、さくらに、使って良いって事か⁉ 
さくらの家族からの許可があったんだから、良いのか⁉