ONLYYOU～赤ちゃんのパパは脳外科医、愛してはいけない人を愛してしまいました。～

御曹司の苦悩～和寿side～

「何を見てるんだ？カズ」
俺は東館と西館の病棟を結ぶ三階の渡り廊下で硝子越しから裏庭の小さなため池に佇む渡り鳥を見ていた。

この時期になると毎年、何処からともなくこうして渡り鳥たちがやって来る。
俺は忙しい合間を縫い、双眼鏡でバードウォッチングを楽しんでいた。
「マキか・・・」

産婦人科の槇村先生が俺に話し掛けて来た。
彼は俺の同期。カズ、マキとニックネームで呼び合う仲。
彼の実家は横浜で有名な産婦人科病院を開業している。
彼には四歳年上の兄が居て、その兄が病院を継いだ。

「渡り鳥だよ」

「へぇー…渡り鳥か…」

「マキも見るか？」

「見る見る」
槇村先生は興味深々に双眼鏡を受け取り、渡り鳥を見た。

「よく見えるよ…あれは…清掃員の広瀬さんだな」

「マキは何処見てんだ？？」



彼は別方向に双眼鏡のレンズを向けてポツリと呟く。