悪役令嬢リーゼロッテ・ベルヘウムは死亡しました
断罪イベントは優雅にド派手に そして終わりよければ……
 わたしが連れてこられたのは王宮の一角にある厳重に結界を張られた、貴人用の牢屋だった。といってもよくある牢屋のように鉄格子に冷たい石壁むき出しの、というものではない。

 高貴なる人が囚われる、一般の虜囚とは扱いの違う牢屋で、小さな窓と見張りのいる扉以外は普通の客用の居室とあまり変わらない。

 わたしがここに連れてこられて二日目。

 わたしの罪状はフローレンス・アイリーンをそそのかして、彼女に竜の卵を盗ませて黄金竜を魔法学園におびき寄せたこと。それ以前の彼女への度重なる嫌がらせ。

 ちなみにアレックス教師はヴァイオレンツに嫉妬をされたのか、あのまま白亜の塔送りになった。どうやらわたしとアレックスが共犯ということになっているらしい。

 まったく、どうしてそうなる。というか、よくもまあフローレンスのあの妄言を信じるなとわたしは呆れていた。明らかに話が破たんしていたのに。

 さすがは乙女ゲームの世界。

 この国ではフローレンスの言葉は絶対らしい。どんな魔法だよどんな法則だよ、と突っ込みたい。
 幽閉されていると暇で、いろんなことを考えちゃう。

 わたしの白亜の塔送りはたぶん確定で。
 あーあ。結局はこのルートに逆戻りか、とか最後にレイルとちゃんと話をしておきたかったな、とか。

 コンコン、と扉が叩かれたのはそんなとき。

 役人が罪状を言いに来たのかなと、わたしは身構えた。
 少しして入ってきたのはフローレンスだった。

 彼女は、一人だった。

 薄茶の髪に緑色の髪をしたごく普通の女の子。クラスの中で一番かわいいというわけでもなく、平均よりもちょっと上くらいの可愛さ。悪く言えば平凡な子。ってどこかのアイドルグループのコンセプトのような子がこの乙女ゲームのヒロインのフローレンスだ。

 そのヒロインがわたしの元を単独で訪れた。
 おっとりとした顔だちにうっすらと笑みを浮かべている。
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