泣きたい訳じゃない。
莉奈は今でもかなり忙しいはずなのに、サポート役を快諾してくれた。

「バンクーバーは、私とって特別な街なの。だから、どんなに忙しくても、私がやりたい。」

今回のオフィスの立ち上げは、カナダでの拠点立ち上げでもあるのと同時に「留学事業」参入の新規事業も絡んでいる。

カナダは語学留学をする学生に人気の国だ。
公用語が英語とフランス語であり、バンクーバーは英語圏だけれど、どの地域に留学するかで学ぶ言葉も選べる。
それに、安全な国というのが日本人にとっては、とても重要だ。

その分、留学斡旋をする業者にとっても激戦区ではあるけれど、俺達は本格的な留学と言うより、短期間留学や海外での生活を楽しみたい人達をメインターゲットに考えている。

旅行会社の強みを活かせる事業戦略をこの二年を掛けて準備してきた。
会社としても、大きな転機になるこの新規事業を任せてもらえたのは、プレッシャーもあるけれど、自分を奮い立たせる力にもなる。

それに、俺はこのバンクーバーの立ち上げを成功させて、莉奈の人生を預けてもらえる男になると決めている。

俺は絶対に失敗できないし、するつもりもない。
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