泣きたい訳じゃない。
「ただの後輩です。前に大学の集まりの時にお会いしましたけど。」

「でも、今まで高田社長の話なんて聞いたことなかったのに。」

まだ、拓海は引き下がらない。

「最近、社長になられたばかりだから。」

これ以上、私に聞かないで。
拓海に兄だとバレるのは、それはそれで話がややこしくなりそうだから・・・。

「そうか、じゃあ、機会をみて連絡してみるよ。」

あれ?私はその返事に納得できない。

「直ぐにはしないんですか?」

急いで連絡をして来たのに、かなりのトーンダウンをしている。拓海も拓海でやっぱりおかしい。

「青柳さんは、高田ホテルズと何かあったんですか?」

私は聞かずにはいられなかった。

「別に何もないよ。」

今度は拓海が焦っている。
本当はもうちょっと聞きたいけど、墓穴を掘りそうなので我慢した。

「じゃあ、直ぐに連絡して下さいね。」

兄はせっかちなので、待つのが好きじゃない。
個人的には絡まないで欲しい二人ではあるけど、ここまで来たら上手くいって欲しいと思っている。

「ありがとう。じゃあ、明日にでも連絡しておくよ。」

電話を切ると、兄には『青柳さんから連絡があるからよろしく。」とメールし、拓海には兄の仕事用のメールアドレスを伝えた。

まさか、私が兄と自分の彼氏を繋ぐ日が来るなんて思ってもいなかった。
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