泣きたい訳じゃない。
兄の家に着くと、お兄ちゃんと葵ちゃんが出迎えてくれた。

葵ちゃんは恥ずかしそうにしながらも、可愛く挨拶してくれる。

奥に通されると、キッチンにいた真美さんにお土産のケーキを渡した。

「今日はありがとう。お父様とお母様にも来て頂けて嬉しいわ。」

「こちらこそ、ご招待ありがとうございます。勝手気ままな両親ですみません。」

両親はリビングで葵ちゃんにプレゼントを渡して、喜んでいる。やっぱり、孫は可愛いらしい。

「私も何かお手伝いしましょうか?」

「ありがとう。じゃあ、コーヒーの準備をしておいたから、カップに注いでくれるかしら。」

「はーい。」

並べられたカップを見ると、数が一つ多い気がする。

「あっ、今日ね、実は私の妹も来ることになって。前回、葵の誕生日に来れなかったからって。」

「そうなんですね。じゃあ、妹さんの分は来られてからの方がいいですね。」

私は5人分のコーヒーを注いで、リビングに運んだ。

「今日は、電話しなくていいのか。」

早速、兄からの攻撃が始まった。
少しぐらいゆっくりさせて欲しい。

「電話なんてしないから。」

私は兄の目を見ないで答える。
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