泣きたい訳じゃない。
同じ朝を迎える
「どうしてここに?」

「谷山、ありがとう。」

「いい同期を持った事に感謝しろよ。」

「ああ。お前も気を付けて、日本に帰れよ。」

二人が同期だと初めて知った。
私は谷山さんの年齢も知らなかったし、二人がこうやって話すのを初めて見た。

「じゃあ、渋谷さん。青柳のこと泣かさないであげてね。」

谷山さんはそう言うと、車に乗り込み走り去って行った。

私はこの状況がまだ把握できていない。

「拓海、どうしてここにいるの?」

「週末に話をしようって言っただろう。」

言い終わるより先に、拓海に腕を掴まれ、私は拓海の胸の中にいた。

「恥ずかしいよ。」

「ここはアメリカだぞ。誰も気にしてない。」

確かに、そうかも。

「もっと恥ずかしい事するから。」

拓海が一瞬離れたかと思ったら、そのまま顔を寄せて、私にキスをする。

何ヶ月ぶりに、拓海に触れただろう。でも、この感触は絶対に拓海だ。
優しくて、激しくて、息もできない筈なのに吐息が漏れてしまう。

私は拓海にしがみ付く。
1ミリの隙間もないくらいに。 

拓海の舌が私の唇をこじ開ける。
私はそれに抗えず、身を任せてしまう。

無意識の涙が溢れて止まらない。

「莉奈、好きだ。」

唇を離さないまま、拓海が呟く。

「私も。」

結局、私は拓海が好きなんだ。

どれぐらいそうやっていたのか分からない。
でも、少し冷静になると、ここは私のホテルの前だったと思い出す。

取り敢えず、部屋に行った方がいい気がする。
< 57 / 70 >

この作品をシェア

pagetop