燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~
7章:旅行と初めての夜のこと

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―――自分は彼女が思うほど、優しくて綺麗な人間ではない。



 病院の屋上。一人夜勤明けのコーヒーを飲んで、自宅マンションを見上げる。
 ちょうどここから自宅の寝室の窓が見えて、カーテンが閉まっていることで、たぶん彼女はまだ寝ているのだろうと思った。いつも少し寝相の悪い彼女を思い浮かべて、苦笑する。
 一人だとベッドから落ちかねない。自分がいなくて大丈夫だろうか、と思っている自分がおかしく思える。実際は、自分の方が、彼女がいないとダメなくせに、と。


 彼女との旅行はもう明日に迫っていた。彼女には覚悟してほしいと告げたが、自分だって覚悟しなければならない。
 結局どうするべきか答えが出ないまま、でも、きっとあのときの彼女が、決心の背中を押してくれるだろう、とも思っていた。

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