聖女の曾孫
4 愛と喜び

書庫にひきこもり働く私を、宮廷の誰もが心配してくれた。
そのほとんどが、先日のミトリィ伯爵によるオペラ事件で、私がすっかり精神衰弱し塞ぎ込み仕事に没頭することで絶望感を紛らわせていると考えているようだ。

書庫には様々な見舞いの品が届いた。


「……ハチミツ。紅茶に入れましょう……」


たしかに、私は絶望した。
独り善がりだった己の恋心を恥じ、居た堪れなくなっていた。

もし私の気持ちが迷惑だったら、私も光魔法でボコボコにされて当然。
体が痛いのはいい。でもヴァクーニから嫌悪されるような事になったら、私は……きっと打ちひしがれて倒れてしまう。元婚約者は強かった。地に伏してまで、私を見つめていた。
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