トライアングル 上
【第3章】 白熱(はくねつ)

チカッ!
夏の日差しが目に入り眩しくて視界が一瞬光で見えなくなる。
亮輔はカートで敗北したものの「負けるわけにはいかない!」と、次の勝利方法を計算していた。
「前回カートであったから今回は『車』、『コース』、『走る』であろう。これでどれが来ても今回の勝ちは固い。次回はは自分の得意分野を決めれるとして、問題はその次。次回のチョイスで何とか競技を絞らせたいところだけど、、、。」
『車』、『コース』、『走る』からどのような競技を祐介が選んで来るか予測しながら様々なルートで自分が有利となるような考えを巡らす。
その交錯の中、祐介の「がハハハ」という笑い声が響く。
「がハハハ、、、、これはいいのう。」
亮輔は目を開けてその競技に驚く。
「な、なんだこれは!?」
 

(第2戦目)祐介ターン 連想ワード「カート」
     「カート」→「走る」=「競争」
        「障害物競争」
   1周400メートルのトラックに仕掛けら               
   れた様々な障害を越え先にゴールした方       
   が勝ちとする。
   種目については後述。


「それでは第2戦目『障害物競争』について説明させて頂きます。」
女神が今回は赤のハチマキを額に付け、白のタスキを肩から掛けた姿で宙を浮いている。
気付くと両者とも学校のジャージに着替え、祐介の額には白いハチマキ、亮輔の額には赤いハチマキが巻かれている。
場所はというと、、、トラックの周りの雲梯や登り棒といった遊具。
どうやらどこかの小学校らしい。
「400メートルのトラックを各所に設けられた障害を越え、先にゴールした方が勝ちとします。スタートラインはここ。」
今回も都合よく祐介と亮輔の立っている足元に引かれたライン。
ラインと共に置かれている見覚えのあるもの。
「おお!これは!!」
野球で使う鉄製のバット。
祐介はそれを手に取ると、いつものバッティングの練習のようにブンブン振り回す。
「何を打てばいいんじゃ?」
「、、、、。」
ウキウキしている祐介とは裏腹に亮輔はそのまま放置してあるバットとその先を見つめ無言で考えにふけっている。
「いえ、まずはこれを地面に立て額に当てて、クルクル10回回ってもらいます。」
女神が空中でバットを用意してクルクル回る素振りを見せる。
「やっぱり!」
亮輔が真剣な眼差しでその先のコースを見据える。
「なるほどのう、、、。」
祐介はバットの尻の部分を額に当て地面に立て、どのように回ったらいいか「こうかの?」とスタートの練習を行う。
「次はそのまま"平均台"を渡ってもらいます。」
それぞれのコースの先には平均台が並べられている。
「、、、、。」
亮輔は腕を組み、額にコンコン人差し指を当てながら無言で思慮を巡らす。
祐介は練習をやめ、「フムフム」とも「まぁまぁ」とも取れる顔で背中を丸め人差し指と親指で顎を掴む。
「その次は"三輪車"に乗って進んでもらい、次の机の上に置いてある"もの"に仮装をして下さい。」
平均台の直後、三輪車の置いてある場所からさらに進むとそこには『?』と書いてあるよく目立つ紫色の箱が置かれた机がある。その横にはカーテンで仕切られた更衣室のようなものが、、、。
「なんか大掛かりになってきたのう!」
祐介は「次は何がくるんじゃろう」と楽しそうに顎を掴んだままニヤついている。
「次は"パン食い競争"。手を使わずパンを咥えて食べて下さい。」
少し高さの違う棒から垂れる紐に吊るされたパン。
女神は空中でパンを取る見本の説明をしながら上を向いてピョンピョン跳ねてみせる。
「ちょうど腹が減っていた所じゃ!」
祐介は腰に手を置き、仰け反るようにがハハハと高笑い。
ここで亮輔がコンコンしていた指を止め、女神に問いかける。
「それは手を使わず口でキャッチしたパンは、紐から取ったら手で持ってもいいのか?」
女神は跳ねるのを止め、「パンをキャッチした」つもりでモグモグ口を動かしながら説明する。
「そうですね。、、、確かにそのまま咥えっぱなしというのも大変ですので、パンをしっかり食べて頂ければ手で持ってもいいことにしましょう。」
亮輔は先程の敗北で特にルールについては抜かりがないように神経質になっていた。
「よろしいですか?」
「、、、ああ。」
祐介とはまた別で話を進める亮輔と女神。しかし祐介は先程の勝利の余韻もあって、とにかく早く楽しみたくて仕方がない。
女神は説明を続ける。
「では、その後"ハードル"を倒さず越えていただき、」
マックスまで高さを上げられたハードルが各1つずつ。
「これは倒したら一度起こし、やり直していただきましょう。」
そこから少し距離を置いて、
「次に"跳び箱"を飛び越えていただき、」
踏み切り台と5段ある跳び箱。
「最後に"網"をくぐって、ゴールです。」
最後はコース上にある大きな網をくぐり、10メートル程走ってゴールとなる。
「、、、、。」
亮輔はまた腕を組み、額に人差し指をコンコン当て黙る。
祐介はというと、屈伸をし、伸脚をし、「早くやろうや!」と準備運動を始める。
「質問はありませんか?」
女神の問いかけに、
「もちろんじゃ!」
と、スタートラインで走るポーズをとる祐介。
「、、、ああ。」
亮輔はそう言うと、足元のバットを手に取った。
それを横目で「おっ!」と気づいた祐介が急いでバットを取り直す。
「それでは、まいります!」
女神は銃を取り出し、左耳を人差し指で塞ぎ、右手は真っ直ぐ上空へ向け、
「位置について!」
立てたバットに額を当て、にんまりニヤける祐介。
カチャッという音と共に銃の引き金が引かれる。
「よーい!」
立てたバットに額を当て、無表情で押黙る亮輔。
女神は人差し指で力強くトリガーを引いた。
「パーーーン!!」

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