トライアングル 上
火薬の破裂音の高い音が響き渡ると同時に、両者とも小刻みに額にバットを当てたままバットの周りを回り始めた。
「い〜〜ち、に〜〜、、、、。」
「うおおおおお!」
クルクル回る景色の中、祐介は思い出していた。
「わしはこうやって亮輔と戦うのは嫌いじゃない、、、、。」
祐介と亮輔の出合はその頃住んでいた集合住宅。
すでに生まれた時から亮輔と梨緒が家族と共に住んでいた棟に幼稚園に上がる少し前に祐介の家族が引っ越して来た。
「亮輔くん、梨緒ちゃん。これから祐介をよろしくね。」
そう両親に紹介された祐介だが、今まで梨緒と亮輔以外に同じ棟に同年代が居なかった2人にとって初めての自分たち以外の同年代に、
「、、、。」
2人とも母親の足に隠れ、返事もしなかった。
最初の2人の印象は最悪。
しかし、社交的で好奇心旺盛な祐介は事あるごとに2人に話しかけた。
「なあ、亮輔くん!一緒に公園行かん?」
「なあ、梨緒ちゃん!ショッピングセンター付いてきてくれへん?」
「なあ、亮輔くん!梨緒ちゃん!公園の向こうの1棟には何があるんじゃろうか?」
初めは違う方言を話す祐介を警戒して、どこか違和感のあるギクシャクした関係の3人だったが、積極的な祐介に押されながらのお出かけは、ずっと集合住宅の11棟でしか過ごしていない2人にとっては刺激的な大冒険だった。
こうして幼稚園に上がる頃には<b>3人はいつも一緒に行動する"仲良し"になっていた。</b>
そんな祐介と亮輔が初めて激突したのは幼稚園の年長さんに上がったある日、
「ガシャーン!」
亮輔の大事にしていた車のおもちゃを祐介が「ブーン!」と手で持って机の上を走らせているうちに、滑って落として壊してしまう。
「、、、む〜。」
壊れた車の破片を見て泣き出しそうな亮輔。
「、、、ははは。亮輔くん。すまん、、、」
普段から暗い事が嫌いな祐介はどうしていいか分からず、つい笑って誤魔化してしまう。
そんな祐介の態度に涙目をキリっと切り替え、祐介の胴の辺りにタックルをかまし押し倒す亮輔。
「バカ!バカ!バカ!バカ!」
馬乗りになり祐介をポコスカ殴り倒す。
両手で顔を隠し、亮輔の駄々を捏ねるような振りのパンチをガードする祐介だが、一方的に殴りつけられているうちに、
「いって〜な〜〜!」
顔をガードしたまま思いっきり起き上がり、その勢いで尻餅をついた亮輔の頭をポカっと1回叩くように殴った。
「、、、うっ、、、うっ、」
殴られた驚きで一度泣きそうになる亮輔だったが、
「うわあああ!」
半べそのまま祐介に喰いつくようにしがみつき、おもいっきり両方の頬をつねった。
「痛い!痛い!」
祐介もその痛さに半べそになりながら、お返しに亮輔の頬をおもいっきり引っ張る。
「む〜〜〜!!」
お互い頬と頬の引っ張り合い。
「こら!2人とも!やめなさい!」
その騒ぎに気付いた先生が制止に入り、その後祐介がしっかり謝り、その場は収まった。
「おとなしいと思っとった亮輔の本気、、、。」
「は〜〜ち、きゅ〜〜、」
「うおおおお!」
バットの周りを回る祐介。回る速度が早くいつのまにか亮輔とは2回ほど回数に差が開いている。
「亮輔とはこのころからちゃんと本気で言い合えるようになった気がする。」
「じゅう!!」
女神が10を数え終わると同時に、祐介は額に当てたバットを「おらぁ!」と、投げるように置き、進行方向の平均台に向かって走り出す。
「あれ、、、?」
しかし、真っ直ぐ走っているつもりが真っ直ぐコースの外に進んでしまう。
「どうなっとるんじゃ!?」
世界がクルクル回り、10メートルもない"平均台"まで辿り着く事も出来ない。
一方亮輔は、、、
「は〜〜ち、きゅ〜〜。」
少し遅れるもバットの回転を終えようとしていた。
「バカな奴。バットは早く回ればいいってもんじゃないんだよ!」
亮輔は額にバットを当てるも視線は回転の斜め後方を見ている。
「フィギュアスケート選手がやる『目が回らないコツ』ってやつだ!」
「じゅう!」
亮輔は額のバットをそっと地面に置くと一旦停止して視界の景色がユラユラ、頭がクラクラしないのを確認すると、
"平均台"をしっかり見つめ、走り出した!
「よっしゃ!」
ようやく"平均台"に乗っかった祐介。
「うおっ!?」
真っ直ぐ進むことが出来るようになっても"平均台"に横向きに乗っかると上手く立っている事すら難しい。
フラフラする身体を支えるように膝をくの字に曲げ、右手を膝に置き、頭を支えながら、
ゆ〜〜っくり、ゆ〜〜っくりと進行方向へカニ歩きで進む。
「もらった〜!」
祐介が2,3歩進んだところで亮輔がダッシュで、そのまま"平均台"に突入。スタスタと駆けて行く。
目の前をダッシュで駆けて行く亮輔を見て、祐介も
「うおおおお!」
と、フラつきながらもカニ歩きのペースを上げる。
「お先〜〜!」
亮輔があと3歩ほどで"平均台"を降りようとした、その時
一瞬フワッと世界が揺れる。
「あれ?」
ダッシュの勢いのまま"平均台"から落下。スタスタ駆けて"三輪車"の横を通過。
「、、、くっそう!」
せっかくあと少しで到達出来たはずの"三輪車"を横目に
頭を抱えながら"平均台"へ逆戻り。
「効いていたのか、、、。」
祐介が"平均台"を半分ほど超えたあたりで亮輔がダッシュで祐介の前を戻っていった。
「よっしゃ!」
カニ歩きの祐介は目の回りが収まってきたのかペースを上げる。
「次こそは!」
亮輔が"平均台"に上り、さっきと同じハイペースで祐介を追う。
「よし!とう!」
"平均台"もあと1歩という所で祐介は一気にジャンプ。
両足でスタッ!としっかり着地。勢いで両手を膝に置く。
祐介が"平均台"からジャンプするのを確認した亮輔。
亮輔も4分の3を超えている。
「よっしゃ!」
しっかりとした足取りで2,3歩歩く祐介。
目はもうほとんど回っていない。
そのまま"三輪車"のハンドルに手を掛ける。
「待ちやがれ〜!」
後に続く亮輔もダッシュで追いつき、ハンドルに手を掛け、跨ぎ、がに股でこぎはじめたのは、
ほぼ同時!!
「い〜〜ち、に〜〜、、、、。」
「うおおおおお!」
クルクル回る景色の中、祐介は思い出していた。
「わしはこうやって亮輔と戦うのは嫌いじゃない、、、、。」
祐介と亮輔の出合はその頃住んでいた集合住宅。
すでに生まれた時から亮輔と梨緒が家族と共に住んでいた棟に幼稚園に上がる少し前に祐介の家族が引っ越して来た。
「亮輔くん、梨緒ちゃん。これから祐介をよろしくね。」
そう両親に紹介された祐介だが、今まで梨緒と亮輔以外に同じ棟に同年代が居なかった2人にとって初めての自分たち以外の同年代に、
「、、、。」
2人とも母親の足に隠れ、返事もしなかった。
最初の2人の印象は最悪。
しかし、社交的で好奇心旺盛な祐介は事あるごとに2人に話しかけた。
「なあ、亮輔くん!一緒に公園行かん?」
「なあ、梨緒ちゃん!ショッピングセンター付いてきてくれへん?」
「なあ、亮輔くん!梨緒ちゃん!公園の向こうの1棟には何があるんじゃろうか?」
初めは違う方言を話す祐介を警戒して、どこか違和感のあるギクシャクした関係の3人だったが、積極的な祐介に押されながらのお出かけは、ずっと集合住宅の11棟でしか過ごしていない2人にとっては刺激的な大冒険だった。
こうして幼稚園に上がる頃には<b>3人はいつも一緒に行動する"仲良し"になっていた。</b>
そんな祐介と亮輔が初めて激突したのは幼稚園の年長さんに上がったある日、
「ガシャーン!」
亮輔の大事にしていた車のおもちゃを祐介が「ブーン!」と手で持って机の上を走らせているうちに、滑って落として壊してしまう。
「、、、む〜。」
壊れた車の破片を見て泣き出しそうな亮輔。
「、、、ははは。亮輔くん。すまん、、、」
普段から暗い事が嫌いな祐介はどうしていいか分からず、つい笑って誤魔化してしまう。
そんな祐介の態度に涙目をキリっと切り替え、祐介の胴の辺りにタックルをかまし押し倒す亮輔。
「バカ!バカ!バカ!バカ!」
馬乗りになり祐介をポコスカ殴り倒す。
両手で顔を隠し、亮輔の駄々を捏ねるような振りのパンチをガードする祐介だが、一方的に殴りつけられているうちに、
「いって〜な〜〜!」
顔をガードしたまま思いっきり起き上がり、その勢いで尻餅をついた亮輔の頭をポカっと1回叩くように殴った。
「、、、うっ、、、うっ、」
殴られた驚きで一度泣きそうになる亮輔だったが、
「うわあああ!」
半べそのまま祐介に喰いつくようにしがみつき、おもいっきり両方の頬をつねった。
「痛い!痛い!」
祐介もその痛さに半べそになりながら、お返しに亮輔の頬をおもいっきり引っ張る。
「む〜〜〜!!」
お互い頬と頬の引っ張り合い。
「こら!2人とも!やめなさい!」
その騒ぎに気付いた先生が制止に入り、その後祐介がしっかり謝り、その場は収まった。
「おとなしいと思っとった亮輔の本気、、、。」
「は〜〜ち、きゅ〜〜、」
「うおおおお!」
バットの周りを回る祐介。回る速度が早くいつのまにか亮輔とは2回ほど回数に差が開いている。
「亮輔とはこのころからちゃんと本気で言い合えるようになった気がする。」
「じゅう!!」
女神が10を数え終わると同時に、祐介は額に当てたバットを「おらぁ!」と、投げるように置き、進行方向の平均台に向かって走り出す。
「あれ、、、?」
しかし、真っ直ぐ走っているつもりが真っ直ぐコースの外に進んでしまう。
「どうなっとるんじゃ!?」
世界がクルクル回り、10メートルもない"平均台"まで辿り着く事も出来ない。
一方亮輔は、、、
「は〜〜ち、きゅ〜〜。」
少し遅れるもバットの回転を終えようとしていた。
「バカな奴。バットは早く回ればいいってもんじゃないんだよ!」
亮輔は額にバットを当てるも視線は回転の斜め後方を見ている。
「フィギュアスケート選手がやる『目が回らないコツ』ってやつだ!」
「じゅう!」
亮輔は額のバットをそっと地面に置くと一旦停止して視界の景色がユラユラ、頭がクラクラしないのを確認すると、
"平均台"をしっかり見つめ、走り出した!
「よっしゃ!」
ようやく"平均台"に乗っかった祐介。
「うおっ!?」
真っ直ぐ進むことが出来るようになっても"平均台"に横向きに乗っかると上手く立っている事すら難しい。
フラフラする身体を支えるように膝をくの字に曲げ、右手を膝に置き、頭を支えながら、
ゆ〜〜っくり、ゆ〜〜っくりと進行方向へカニ歩きで進む。
「もらった〜!」
祐介が2,3歩進んだところで亮輔がダッシュで、そのまま"平均台"に突入。スタスタと駆けて行く。
目の前をダッシュで駆けて行く亮輔を見て、祐介も
「うおおおお!」
と、フラつきながらもカニ歩きのペースを上げる。
「お先〜〜!」
亮輔があと3歩ほどで"平均台"を降りようとした、その時
一瞬フワッと世界が揺れる。
「あれ?」
ダッシュの勢いのまま"平均台"から落下。スタスタ駆けて"三輪車"の横を通過。
「、、、くっそう!」
せっかくあと少しで到達出来たはずの"三輪車"を横目に
頭を抱えながら"平均台"へ逆戻り。
「効いていたのか、、、。」
祐介が"平均台"を半分ほど超えたあたりで亮輔がダッシュで祐介の前を戻っていった。
「よっしゃ!」
カニ歩きの祐介は目の回りが収まってきたのかペースを上げる。
「次こそは!」
亮輔が"平均台"に上り、さっきと同じハイペースで祐介を追う。
「よし!とう!」
"平均台"もあと1歩という所で祐介は一気にジャンプ。
両足でスタッ!としっかり着地。勢いで両手を膝に置く。
祐介が"平均台"からジャンプするのを確認した亮輔。
亮輔も4分の3を超えている。
「よっしゃ!」
しっかりとした足取りで2,3歩歩く祐介。
目はもうほとんど回っていない。
そのまま"三輪車"のハンドルに手を掛ける。
「待ちやがれ〜!」
後に続く亮輔もダッシュで追いつき、ハンドルに手を掛け、跨ぎ、がに股でこぎはじめたのは、
ほぼ同時!!