僕の婚約者〜気高き戦乙女〜
王族、貴族という存在は、華やかに見えて実につまらない人生を送る人々である。百年ほど前、レグルス王国にいた哲学者の言葉だ。レグルス王国第二王子のノーマン・フェイ・ライデンは、この瞬間に緊張しながらも、その言葉に深く同感していた。

王族や貴族に生まれれば、お金が山のようにあるのだから貧しさや飢えに困ることはない。立派な屋敷や城があり、何不自由ない暮らしが約束される。

しかし、王族や貴族に生まれてしまえば、自分で自分の人生を決めることができなくなる。あれをしろこれをしろと言われ、友達や結婚相手すら周りから決められるのだ。だから、つまらない人生だと哲学者たちからは言われる。

ノーマンは今、婚約者に会うために普段着ているものよりずっと上等の白い衣装を見に纏い、ずっしりと重い黒いマントを羽織っている。その顔は、緊張で強張っていた。

ノーマンが婚約をするのは、レグルス王国から遠く離れた東の島国、白樹国の第一王女のキサラ・アマノガワである。ノーマンは第一王子ではないため、国を治めるには他国の姫と結婚するしかないのだ。
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