嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
序章
(やばい、やっぱり逃げ出したい……)

 ドキドキを通りこして、ドドドドド〜って感じで打ちつけてくる心臓を押さえながら美琴は天を仰いだ。
 まず、この非日常的すぎる寝室も緊張感が増す一因だろう。だだっ広い部屋のど真ん中に敷かれたお布団。時代劇でよく見る大奥のセットみたいだ。

「改めて見ると、豪華なお部屋ですよね。さすがは御堂家って感じで」

 決して派手ではないが、どれもこれも最高級品であることは見てとれる。
 白いシーツがピシリとかけられたお布団の向こう側に、これまた時代劇の登場人物みたいな佇まいで座っている彼、御堂礼は美琴の言葉に首をひねった。

「そうか? 子供の頃からこの部屋で過ごしてるから俺にはよくわからないな」
「はい、素晴らしいですよ。調度品も畳も見事なお品で。このお屋敷で過ごさせてもらえるなら、これまでおさめてきたうちの子たちも幸せですね!」

 これまで御堂家におさめてきた数々の着物たちに美琴は思いを馳せる。

(あ、着物のこと考えたら少し落ち着いてきたかも)

 すると、礼がふっと頬を緩め美琴を見つめた。

「君の着物愛はよ〜くわかるが、この状況でそんなのんきな話をできるなんて、見かけによらず経験豊富なのか」
「は?」
「それなら、存分に楽しませてもらおう」

 礼が純白のシーツに膝をつき、こちらにずいっと身を乗り出してくる。彼の大きな手が美琴の頬に触れた。
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