嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
六章 薔薇色の未来
「美琴。体調はどうだ?」

 礼は毎朝欠かさず、美琴にそう声をかけてくれる。

「はい。つわりも落ち着いて、だいぶ元気になってきました」

 あと少しで妊娠5ヶ月、安定期といわれる時期に入る。実際、美琴の食べづわりはずいぶん良くなった。悩みは深いけれど、気持ちも安定して先のことも冷静に考えられるように変化してきた。

「もし身体が大丈夫なら、今日は一緒に外に出かけないか?」
「私より礼さんの仕事は平気なんですか? お茶会の準備が大変でしょう」

 来月、紅葉の季節に合わせてこの屋敷で御堂家主催の茶会が開かれるのだ。礼が次の家元となることを客人に正式に発表するおめでたい会なのだそうだ。最近の彼はその準備に追われていた。

「大丈夫だ。今日は一日休みにしてある」
「それなら」

 美琴はこくりとうなずいた。気分転換も大切だと思ったのだ。妊娠が発覚して以来、美琴は御堂の屋敷にひきこもりがちだった。実はあきづきの仕事も少し休みをもらっている。礼が体調を心配していたこともあるが、それより勝司になにをどう説明したらいいのかわからなくて逃げているというのが本当のところだ。

「一緒にお出かけなんて初めてですね。デートみたい」

 美琴は素直に喜んだ。礼は忙しい人だし、デートしたいなんで考えたこともなかったが実際に叶うとものすごく嬉しい。

「みたい、じゃくてちゃんとしたデートだ」

 礼は苦笑しながら、美琴にチケットを差し出した。

「映画や遊園地も考えたが、君が一番喜びそうなところにした」
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