顔合わせも済んでいないのに、何故か第一王子との婚約を破談にされたエルナ。
学園では好奇の視線に晒され、次は第二王子を狙っていると噂され、第二王子とその恋人からは目の敵にされてしまう。
彼らと打ち解けようと、エルナは二人にケーキを焼いて持って行くが、貴族の行いではないとそしりを受ける。

失意のエルナは学園の端で一人の青年と出会う。
彼女のケーキを喜んで食べてくれたその青年は、動物と会話できる不思議な力を持っていた。

彼の力で噂を流した犯人は突き止められ、事態は解決に向かう。
ただ、実は件の青年こそが、エルナとの婚約を破談にした第一王子その人だった。

第一王子アルバンは、とある魔方陣の事故で王位継承に必要な力を失ってしまっていた。
その力とは、国中の動物を制御下に置く神秘の力。
彼の力は国防の要でもあるため、事実を口外できず、破談の理由を知らせられなかったのだ。

アルバンは今までの事情を説明し、エルナに謝罪する。
エルナは改めて交際をやり直しましょうと提案。二人の仲は急速に深まっていく。

ある日、エルナはアルバンのリハビリを兼ねて、趣味のお菓子作りに彼を誘う。
そこで、ふとした拍子に二人の魔力が共鳴し、アルバンの事故時の記憶が蘇る。
彼は意識が朦朧としながらも、手にしていた生クリームの絞り袋でケーキの生地に紋様を描いていく。
そして、それこそが彼の力を取り戻すために必要な、事故で消失した古代魔法陣の図柄だった。

治療法が見つかったにも拘らず、アルバンは手術を拒絶する。
というのも、事故前のアルバンは、楽しみなど無意味と切捨てる冷徹な合理主義者だったからだ。
再び力が戻れば、今の穏やかな気持ちも、エルナを愛する心も消えてしまうのではと彼は恐れる。
そんなアルバンをエルナは静かに説得する。この国にはあなたの力が必要です。私だけがあなたを独り占めするわけにはいきませんと。

アルバンはエルナに一つの頼み事をする。
それは、いつかもう一度ケーキを焼いて欲しいというもの。
手術が終わったらそんなものはいらないと言うかもしれない。それでも、この気持ちが残っているうちに君に頼んでおきたいと彼は言う。
エルナは強く頷き、約束する。

そして手術後、顔を赤らめつつ、エルナのケーキを所望するアルバン。
彼の心は変わっていない。エルナは目に涙を溜め、恋人の帰還を喜んだのだった。

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