丸重城の人々~前編~
「あ、大翔も早く食べなきゃ!
仕事遅れる……。
待ってて。すぐ用意するから!」
「あぁ…てか、広ばぁにさせろよ!」
「いいじゃない?急に柚希ちゃんの仕事とるのも、かわいそうでしょ?」
「まぁな!」

「じゃあ俺も仕事あるから、部屋戻るわ!」
「あ、じゃあコーヒー持って行きますね!」
「ありがと!姫」
「俺はまだ柚希といる!」
「あ?中也も部屋行け!邪魔」
「うるせーよ!俺の勝手だ!」
「…ったく!」

それから大翔も仕事へ行き、
「悪いけど市子ちゃん、柚希ちゃんと買い物お願いできる?」
「あ、はい!」
「買う物は少ないんだけど、みんなこだわりあるから。柚希ちゃんに聞いて買って来てくれる?」
この家の一行は、みんなこだわりが強く、おつまみはこれ、コーヒーはこのメーカー等、とにかく凄い。

「じゃあ、行きましょうか」
「柚希!」
「ん?」
「大丈夫?俺も行こうか?」
「フフ…大丈夫だよ!市子さんいるし」
「じゃあ…私一人で大丈夫ですよ?」
「え?でも…みんなこだわり強いし……」
「じゃあ、電話しますから!」
そこまで言うと、出ていく市子。

「ちょっ…市子さん!?」
「ほっとけよ!それより、いい曲できたんだ!柚希、聞いて?」
「うん…」

完全な嫉妬だった。
市子は、お姫様のように扱われる柚希に、酷い嫌悪感を感じたのだ。
確かに普通に考えれば、かなり優遇扱いだ。
でも、柚希がこれまでやってきたことは、それなりの重みがあるのだ。
だから、みんな柚希の為になんでもしたいのだ。
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