丸重城の人々~前編~
「色々あるわね~!」
「うん…」
「柚?怖い?」
「大翔…ううん。大丈夫…」
「無理すんなよ、柚希」
大翔と中也が心配そうに、柚希の顔を覗き込む。
「思ってたより、人多いね…」
ここはホテル宿泊と、コテージに別れている。
お土産屋さんは、ホテルロビーしかないので、人が多い。

「だな。部屋戻ろうか?柚」
「でも…広子さんに何か渡したい。いつもお世話になってるし」
そこが柚希のいいところだ。
たとえどんなに怖くても、相手への気遣いやお礼は欠かさない。
だから、大翔も中也も心を離せない。

「だったら、これは?ここの限定みたいだし」
と響子が提案する。
「うん。いいと思う!」
「じゃあ、早く買って、部屋戻ろうぜ?」
「そうね」

「あれー?響子ママ?」
響子のクラブのホステスらしき女性五人が、響子に話しかけてきた。
「ほんとだ、ママだぁ!じゃあ市松様と一緒ですか?」
「あー違うの。友達とプライベートで来てるのよ」
「そうなんだ。
━━え?めっちゃカッコいい~!」
今度は後ろにいた大翔や中也を見て、二人に群がるように囲みだした。

ちなみに柚希は大翔の後ろに隠れて、しがみついている。
こんな風に急に来られると、柚希にとっては恐怖でしかない。相手が女性でもだ。
「悪いけど、今急いでるの。また今度の機会にね!」
響子が間に入り、さりげなく大翔達から遠ざける。

「え~!いいじゃないですかぁ?
あ、夕食一緒しません?ママ達もコテージですよね?」
「え?」
「私達もなんですよ~。BBQ一緒にしましょ?」
「悪いけど、俺達は俺達だけで楽しみたいから!」
中也がはっきりとした口調で言う。
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