丸重城の人々~前編~
柚は何もわかっていない。
自分自身が、どれだけ純粋で綺麗で、可愛らしくて、魅力的か。
そして俺や中也、他の男達の心を荒らして、奪い取ってるのか。
またなによりも、中也の激情を。

他人のことはよく見てるくせに、自分のことはまるで鈍感。
俺の狂おしい程の、狂愛をわかっていない。
もし、許されるなら今すぐに縛り付けて、この部屋に監禁したい。
中也だけでなく、響子や他の人間に一生会わせず、閉じ込めてしまいたい。

この醜い程の嫉妬心や、狂おしい程の支配欲を隠す為に、柚の口唇を欲望のまま貪った。

「やぁ…苦し……やま、と…離し…て…」
「ダメだ…柚はもっと知るべきだよ…俺の気持ち……」
大翔の口唇が、柚希の口唇から頬や首筋に移動していく。
そして首筋を甘く噛んだ。
「ひゃっ!痛っ!!!
大翔、今噛んだ!」
「うん…俺のモノって印…!
もう黙って!
俺の苦しい愛情を受け取れよ………」

そのまま狂おしい激情を、柚希にぶつける大翔だった。

「柚…」
「ん…や、まと…」
柚希の声がかすれている。
「ごめん…やり過ぎた……」
「ううん……大翔…」
「ん?」
「好きだよ…」
「え?」
「好きなの…」
「柚?」
「だから、泣かないで…?」
「え?俺…泣いてな━━━」
俺は泣いていた。
無意識に━━━━━

俺の激情を受け止めた柚は、動かない手を必死に伸ばして、俺の涙を拭いてくれた。
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