丸重城の人々~前編~
ダン━━━━!
「どうゆうことだよ!?響子!」
「それはこっちが、聞きたいわよ!確実に部屋の壁にかけてたのに、なくなってんのよ!」
「え…なくな、ってる…?」
「柚?」
「柚希?」
柚希の目から涙が溢れてくる。
大翔と中也が心配そうに覗き込む。

「でも、それおかしいわ…!」
広子が冷静に言う。
「今日お昼に響子ちゃんの部屋を掃除した時は、確実に壁にかかってたわよ。ドレス。
だから私が代わりにクリーニング出しに行こうかと、電話したでしょ?
でも響子ちゃんは自分でしたいからって、そのままにしたんだから」
「だとしたら、どうゆうことだ……」
大翔が頭を抱える。
「兄貴、前にアクセがなくなったことあったよな?」
「あぁ、でもすぐ見つかったけどな」
「響子のドレスもだろ?」
「えぇ」
「やっぱ誰かに取られてんじゃねぇの?」
「泥棒…ってこと?」
柚希が震えながら言う。

「でもこの家は、セキュリティ万全よ!この私がそんな甘くすると思う?」
広子が言う。
「だよな…。じゃあこの中にいるってことかよ?それはあり得ねぇだろ?」
「てゆーか早苗さんは?」
響子が言う。
「最近、朝帰りが多いのよ。例の彼氏さんとうまくやってんじゃないの?」
「え?でも、確か別れたって……。
じゃあ新しい彼氏さんかな?」
広子の言葉に、柚希が答える。

そこへ響子のスマホがなる。
「もしもし。━━━うん、大丈夫よ。どうしたの?━━━え?嘘…どうゆうこと!?うん、うん、あー◯◯ホテルね!すぐ行くわ!」
「響…ちゃん…?」
響子の雰囲気が、黒く染まる。
“響鬼”が顔を出した。
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