光を掴んだその先に。




「顔合わせたら揺らぐのか」


「…ううん。ただ、ちょっと複雑っていうか」



確かに生徒の中でこいつの事情を知っているのは、あのガキだけだろう。

あいつが他人に言いふらしてなければの話だが。
そういう奴には見えなかったために尚更。



「ほら、怒っていじめてくるかもだし…!佳祐って昔から意外と根に持つタイプでね、女子にも結構人気だから佳祐くんに何してんのよー!!って…」



コロコロと表情が変わる。

横顔だけだとしても、そんな姿を見ていると普段の疲れが吹き飛ぶ。


夢の中の俺は、幼かった頃の俺は、こいつのこんな笑顔に早く会いたかったのだ。



「わっ」



ポスッと、ポニーテールに纏める髪を崩さぬように手を乗せた。



「お前には指一本触れさせねえから安心しろ。お前は堂々としていればいい」



へへっと、照れたようにうつむく少女。


また俺の知らない顔をされる。

妙に複雑でどこか落ち着かず、それは離れた期間が長すぎるからか。



「“天鬼”じゃなくて“天城”に変えたのは…私を守るためだったのかなぁ」



その答えはyesだった。

絃の父親が、おやっさんが、そうさせると決めたこと。

こいつの母親が天鬼を背負ったことでどんな仕打ちを受けてきたか一番に知ってるからだ。


あの人が守れなかったものを、今度は俺が守る。








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