１０憶で始まった結婚は○○だった

愛する人は生きていますよね？

　ケインとは。
　王室専属の医師であり、国立病院の院長である女医。
　サーチェラスとはもう３０年以上の付き合いがあり、ミネルと結婚するときにとても力になってくれた人である。

　２５年前に、ミネルが焼死してから必要以外に関りを断つようになりコイン的に話をしてくれなくなった。

　何度かサーチェラスは、ミネルの死が受け入れられずケインに本当に焼死しているかどうかを尋ねていたが、ケインは「焼死しておられます」と一点張りだった。

　何かを隠しているようで、ケインはとても冷たく、王室専属でありながらも診察を代理の副院長に頼む事も多くなっていた。

　
　ケインがサーチェラスを避けるようになった理由。

　それは…。





　部屋に戻ってきたファリサは、小瓶をクローゼットの中にある鞄の中に閉まった。

　
　
　そのまま窓際に歩み寄ると、外の景色を見つめたファリサはちょっと遠い目をしていた。


　王室に嫁いできたが。
　広いお城の中で一人ぽっちなのだと、痛感させられたファリサ。

　やることがあると言って、ティケルは執務室にこもってしまい新婚初夜もないまま眠ってしまった。
　特に望んでいたわけではないが、普通に平民と結婚していれば新婚初夜もあり、結婚したばかりの時は新婚旅行なんかに行って2人の時間を楽しんでいるのだろう。

　結婚式まで会わない、写真を見せない、名前も教えない…そんなむちゃくちゃな条件を飲んでくれたのだから何も言えないのは当然だ。

　このまま何も関係を持たないで、形だけの夫婦を永遠に演じて行けばいいだけなのだろうか…。

　
　そう思いながら、ファリサは窓ガラスに写った自分の姿を見た。

　左目を眼帯を覆っている姿は、誰が見ても醜いものだ。
　こんな姿で表に出れば笑いものになる事は分かっている。

　パレードも行わなかったのは、こんな醜い自分の姿を国民に見せるわけにはいかないかだろう…。


　それでもいい…。
　目的は違うから…。

　ファリサはそう自分に言い聞かせた。


　
　結婚して2日目。

　その日は結局ティケルが忙しく、一緒に食事をする事がなかったファリサ。

　夜も遅くまで執務室にこもっていたティンケル。

　ファリサは本を読んでいて、23時頃まで起きていたがまだ戻ってこないティケルにあきらめたような思いで先に寝る事にした。


　ソファーで寝ていて、ベッドに運んでもらうのも嫌だ！

　そう思ったファリサは、クローゼットの中にいを潜めて寝る事にした。

　毛布にくるまってクローゼットの中で眠ったファリサ。

　何となく気疲れしてしまったのか、そのままぐっすりと眠ってしまった。



　ティケルが戻ってきたのは深夜を回る頃だった。

　先に寝ているのかと、寝室を覗いてもファリサの姿がなく驚いたティケルは早を見渡したがどこのもファリサの姿見えない。

　どこに行ったんだ？
　まさか出て行ったとかないよな？

　一瞬そう思ったティケル。

　ふと、クローゼットを見るとちょっとだけ開いているのが見え歩み寄って行った。



　クローゼットを空けようとすると、何かの重みを感じたティケルはそっと開けてみた。


　すると。
　そこには毛布にくるまって眠っているファリサがいた。

「ファリサ…」

　毛布にくるまり身を縮めて眠っているファリサを見ると、ティンケルはギュッと胸が締め付けられる痛みを感じた。

　
　一緒に寝るのは嫌なのだろうか？
　それとも何かに怯えているのだろうか？

　そんな事を考えたティケルだが、このままでは風邪をひいてしまうと思い、眠っているファリサを抱きかかえ寝室へ連れて行った。