ちよ先輩のてのひらの上。
ちよ先輩の腕の中。

初めてのキモチ



4月も終わりに近づいた頃。

一時はどうなることかと思ったけれど、私の高校生活は特に変わったことが起きないまま、時が過ぎていた。


薄桃色の絨毯を散らし、桜のにおいを含んだ風がふわりと私の髪を持ち上げる。

体育館から繋がる渡り廊下に出たところで、すぐ近くの用具倉庫から出て来る人影を見つけて、慌てて体育館の入り口に引き返した。

身を隠す形となってしまってから、あれ、と内心で首を傾げる。

……私、何やってるんだろ……。
隠れる必要、なかったのに。


微かに速まった鼓動を感じながら、そっと校舎の壁から顔を出す。

ジャージに身を包んだちよ先輩と、同じくジャージ姿の女子生徒が、なにかを倉庫へ運び入れていた。


「これで最後?」

「うん」


ふたりの会話が聞こえてきた。……どうやら、授業で使った道具を片付けていたみたいだ。


倉庫の扉を閉め、鍵をかけたちよ先輩が、校庭へと戻ろうとする。

——それを、一緒にいた彼女が引き留めた。

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