『ブラン様。第一王子であるあなた様こそが王位に相応しい。……ご覧なさい、ノワール王子の黒の髪を。王族には滅多に出ない闇の色。きっと王妃の不義の子です。高貴なあなた様とは血が違う』

『おいたわしいノワール様。いいえ、いいえ。わたくしどもはあなた様こそが王位を継ぐ方だと信じております。道理を外しているのはあちらの方。どうぞお心をわたくしたちにお預けください。共に王位を目指しましょう』


 こうして二人が十歳にもならないうちから、この国に巣食う薄汚い貴族たちに心を揺さぶられ続けたブランとノワールはそれを信じてしまうのだ。

 そのまま兄弟の亀裂が決定的になり、二人の父親()が病に伏すところからゲームはスタート。

 プレイヤー(ヒロイン)はゲーム開始時に白と黒の王子のどちらを攻略するかを選び、選んだ王子を心の闇から救い、王にするために愛と知恵と勇気をもって奮闘する。

 選ばれなかった王子の方は敵となり、その王子の婚約者としてルディアーヌ()が登場し、様々な手段でヒロインを妨害し苦しめる。

 そしてここからが『白黒』のエグいところなのだけど、このゲーム、必ず敵側の王子とルディアーヌが死ぬ。どんな選択肢を選んでもどんなエンディングを迎えても、死ぬ。必ず死ぬ。超死ぬ。
 ヒロインがどちらも選ばなかったり、逆に両方を選んで全員が生き残るエンディングは存在しない。
 フルコンプリートしても隠しエンドとか出てこない。王子どっちか一人しか選べない。

 ……ちょっとぉぉぉっ、こんな大雑把でノーテンキで確実にコメディ向きの性格だった私がなんでよりによって『白黒』の世界に転生してるのよぉぉぉぉぉぉ。
 もっと全年齢で平和な乙女ゲームだって有ったでしょおぉぉぉぉ!

 ――しかし! 転生者でありこの先の展開を知っている私は即座に起死回生のプランを思いつくのだ!


 ――これ、二人を仲の良い兄弟のまま成長するように促しつつ、悪の貴族たちを一掃して、ヒロインが現れたら兄弟二人をまとめてヒロインと愛し合うように仕向ければ大団円じゃね? と。


『ブラン。あなたがいつも皆の期待に応えようと頑張ってるのを知っているわ』
『ノワール。あなたの黒い髪、綺麗よ。私は大好き』
『ブラン、ノワール。仲の良い兄弟って素敵よね』
『ねぇ。これからの時代、二人の男性で一人の女性を愛したって良いと思わない?』

 白黒ヘビーユーザーだった前世の知識をフル活用して。
 ゲーム開始時(いつか来る未来)にヒロインに二人を押し付けるために。私はブランとノワールにこう言いまくった言い続けた。
 どうすれば、何と言えば二人の憂いを払うことができるのか。私を信用して心を開いてくれるのか。その事を真剣に考えて言葉を選んだ。

 ついでに然り気無く腐った貴族どものことも密告して排除した。全エンディングを制覇していた私にとって奴等の悪事の証拠を掴むことなど簡単だった。

 頼むヒロイン。こうして私に洗脳された二人を引き受けてくれ! 君なら二人の愛を受け止められるはず!
 元々18禁乙女ゲームのこの世界では男女の色事に関するモラルも低いし!

 え? 自分が二人に愛される道を選ぼうとは思わなかったのかって?
 ごめん、嫌だよあんな男たち。

 だって。
 ブランはパッと見は優しそうで柔和な感じなのに実は腹黒鬼畜。言葉責めと快楽調教でヒロインを泣かせることに堪らない悦びを感じる絶倫野郎。

 だって。
 ノワールはパッと見、ちょっと無口で怖そうだけど実は不器用なだけで優しい人――と見せかけての超むっつりスケベ。ヒロインをコスプレさせることと、いろんなところの開発(・・)が趣味の変態さん。こっちも絶倫。

 こんな性の倒錯者たちはサクッとヒロインに押し付けて、私は平和になったこの国で後はモブとして穏やかな人生を送るのだ。

 ――そう、欲と陰謀と憎しみが支配するはずだったこの国は、私の幼い頃からの努力ですっかり平和だ。ブランとノワールも、他でちょっと見ないくらい仲の良い兄弟に育ってる。ついでに王様も健康でピンピンしてる。
 今なら全年齢対象のラブコメ乙女ゲーム作品の舞台にだってなれるだろう。

 ……なのに。なのに。なのに!


「ほら、ルディ。君のココ(・・)、ちょっと弄っただけでもうこんなに紅くプックリ主張してきたよ。本当に素質があるよね君は」

「ルディアーヌ。固いつぼみのようだった後ろの花も、俺の指を2本飲み込んで喜んでる。もっと柔らかくなれば、3人で同時に愛し合えるな」



 なのにどうして。
 ブランとノワールに、日々こうして前から後ろから愛されているのが私なのでしょう?!