甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

「く、九条先生。今日はよろしくお願いします。急だったのに引き受けてくださって助かりました」
「こちらこそ。で、俺はアレを運べばいいのなか？」

九条先生の視界の先では、５名ほどの人数で車から下ろし終わったたくさんの荷物を台車に乗せ、今日の現場である名取フーズの自社ビルに運び入れている。

これは私達事務の仕事。
医師である先生方や看護師さんは、先に健診会場になる会議室へ向かっている。

九条先生は足早に車へ向かうと、一番大きくて重たいパーテーションのポールが入った袋に手を伸ばした。

「先生、大丈夫です。先に７階の会場へ行って下さい」
「重いものを持つのは男の仕事でしょ？」

微笑みながら紳士的な言動の九条先生はどこまでもかっこいい。
５月だというのにビシッとネイビーのスーツを着こなしているのも、どこか大人の男性の色気を感じる。

初対面なのに人見知りの私が緊張しつつもこうしてやり取り出来るのは、九条先生の柔らかい雰囲気のおかげに違いない。

それでもうちの医師ではない、それも急な代打で来てもらった先生にこんな雑用をさせるわけにはいかない。

「いいえ、これは私の仕事です」

確かに重い機材が多いけど、１年この仕事をしていれば力もつくし慣れっこだ。