隣の部屋の新人くん
終わり
佳弥に連絡してから一週間経った。

一向に返事の来る気配はない。
私は居ても立っても居られず、電話をかけた。

長い長い呼び出し音。

出ないんだろうな。
そうは思うけど、私は諦めが悪い。

次出なかったら切ろう。

そう決めた時だった。

「はい、もしもし」

佳弥の声が耳に届いた。
私たちはまだ終わってなかったことに、ホッと胸をなでおろす。

イスラエルとの時差は7時間。
こっちが夜なら向こうは昼、こっちが朝なら向こうは夜中。

佳弥との電話が繋がったのは、土曜日の夕方5時だった。

「ねーねー、そっち、どう?」
「うん、まあまあ楽しいよ」

久しぶりに聞く佳弥の声。
楽しいよ、という割になぜか低く弾まない。

「なんかあった?」
「別に、なにもないよ」

私からの会話をバツバツと切断するような冷たい口調。
思わず次になんて言えばいいのか悩む。

こんな話し方する人だったっけ。

私は頑張って明るい声を出す。

「いつそっち遊びに行こうかなあ。観光名所も行ってみたいな」

言い終わると、静かになる。
反応が遅い。
空回りする私の声。

「うん、そうだね」

佳弥の、まるで心のこもってない同意がやっと返ってくる。

重苦しい時間。

電話したことを後悔しそうになる。

こんなに私と佳弥って会話できなかったっけ。
こんなに佳弥の声って冷たかったっけ。

次、なんて言おう、なんて言おう、と悩んでいた時。

「ねえ、あかね」

久しぶりに佳弥から名前を呼ばれた。

「俺たち、別れよう」
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