殺人感染
放送室
3階へ向かう中、あたしたちは死体を注意深く確認することにした。


もちろん、その中に殺人鬼のまま死んだ生徒がいたら耳を切り取るためだ。


「こんなに沢山殺されてたなんて……」


殺人鬼の死体の多さに疲弊してしまいそうになる。


あたしももう5体分の耳を切り取っていた。


手にはベッタリと血がついていて、それを洗い流すこともしないまま先へ進んでいる。


救いなのは今のところ雪や香の死体を見ていないことだった。


でも、他のクラスメートたちの死体はすでにいくつも目にしてきていた。


あまり会話をしたことのないクラスメートたちでも、その死に顔を見てしまうと胸が張り裂けそうになった。


「やっと階段だ」


2階の廊下だけは確認できたけれど、教室内までは見ていない。


きっとそこにも沢山の死体があるはずだ。


少し新鮮な空気がすいたくて廊下の窓を開ける。


途端にあちこちから悲鳴が聞こえてきて身をこわばらせた。


必死で逃げてきたし、自分たちのことだけで精一杯だったし、窓も閉められていたから、外の声に気がつかなかったみたいだ。


近くから聞こえてくる悲鳴。


遠くから聞こえてくる悲鳴。


パトカーのサイレンや消防車の音も聞こえてくる。


その音に胸の奥が黒いモヤに包まれていくような感覚がした。
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