カタブツ竜王の過保護な求婚


 あれからレイナはできることに精いっぱい力を注いで、日々を過ごしていた。
 その中で、毎朝の日課になってしまったことがある。


「レイナ様、ご気分はいかがですか?」

「気分は悪くないのよ。まぶたが重いだけ」


 赤く腫れたまぶたに、冷やした布と温かい布とを交互に当てながら、レイナはノーラに答えた。
 ここのところ、夜になっても眠れないのだ。

 昼間は何かと忙しく、時間をやり過ごすことができるのだが、夜になって一人ベッドに入ると途端に不安が襲ってくる。
 男爵夫人の従姉は、王城から、王都から離れろと伝えてきたと言う。ならば謀叛は王都で、王城で起こるというのだろうか。

 レイナは色々な人たちと話をして、情報収集を心がけていた。
また、アンヌやノーラにも城内の噂を拾ってくるようにと頼み、近衛騎士には街へと足を運んでもらっている。

 その結果、やはり城や街のあちこちで不穏な動きが感じられた。
 だが、それをはっきりと形にして掴むことができない。まるで目の前に漂う霞のように。
 レイナたちだけでは限界なのだ。

 どうすればいいのかわからず、酷く怖かった。
 その上、ベッドに横になれば、カインのことを思い出してしまう。
 フロメシアに訪問してからの優しい仕草、時折見せてくれる温かな微笑み。
 恋しさのあまり込み上げてくる涙を必死にこらえた。

< 131 / 207 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop