カタブツ竜王の過保護な求婚


「――レイナを、妃殿下を放せ」


 怒りを抑え、カインは静かに告げた。


「んなの素直に従うわけねえだろ」


 にたりと笑んで、男はレイナに突き付けた剣をすっと動かした。


「レイナ様!」


 この騒動に気付いて次々と駆け付ける騎士や兵たちの中に、アンヌとラベロの姿も見えた。
 二人とも無事だったのだ。
 レイナの体を喜びと安堵が駆け抜けたが、状況は何も変わっていない。

 あまりに嬉しくて油断してしまったから。もっと周りをちゃんと見ていれば。
 だが後悔しても遅い。
 徐々に集まり始めた兵たちが、捕らわれたレイナの姿を見てはっと足を止める。
 圧倒的多数にもかかわらず、カインたちの状況は非常に不利だった。


「レイナ様……」


 弱々しい呟きは、手紙を託した近衛騎士のもの。
 カインは手紙を読んで、急ぎ戻って来てくれたのだ。


「妃殿下を放せ」


 レイナを捕らえた男へと、鋭い双眸を向けたままのカインは再び告げた。
 しかし、男に聞き入れる様子はない。


「んー、そうしたら、俺やばいよなあ?」


 男がくくくと喉の奥で笑うと、レイナに突き付けた剣まで小刻みに揺れた。

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