カタブツ竜王の過保護な求婚


 レイナとの部屋を繋ぐ扉を閉め、寝室を抜けて執務室代わりの書斎に入ったカインは扉を閉めると、そのままずるずると座り込んだ。


「……ヤバイ」

「やばいのは殿下のそのだらしのないお顔です」

「フィ⁉」

「はい、フィルです」

「いや……とにかく、レイナが可愛すぎるんだ」

「それは以前からわかっていたことでしょう?」

「だが、初めはあんなに冷たくしてしまったのに……。それでも私のことを好きだと言ってくれるんだぞ?」

「ですから、縛り付けたくない、巻き込みたくないなどとおっしゃっていないで、最初から素直に優しくなさっていればよかったのです」

「そうは言っても、バルセス公爵令嬢も招いたままだったというのに……」

「確かに計画途中でのご結婚となってしまわれたので大変ではあったでしょうが、冷たくなさる必要はなかったと思いますがね」

「これから明らかに争いが起こるとわかっているのに、みすみすレイナを危険にさらせるわけがないだろう? 私は彼女を守ることもできないのだから」

「それでがっつり巻き込んでしまわれるなど、どんな冗談ですか? 今回は妃殿下の機転で事なきを得ましたけれど、今後も危険はないとは言い切れませんよ」

「ああ、わかっている」


 レイナは守らなければならない存在ではなかった。
 一人でも立てる強さを備えた立派な女性になっていたのだ。
 あの夜――晩餐で夢を語ったカインに『力になりたい』と言ってくれたレイナにはもうそれだけの力があった。


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