モブで地味子な私を、超イケメン男子が、かまってかまって溺愛中!

第1話「サプライズな出会い」

「えええっ!? な、成瀬君(なるせくん)!? な、な、な、何でここにいるの!?」

「へ? ……おわっつ! びっくりしたぁ! み、み、三島(みしま)じゃないか! 制服(せいふく)じゃないから、すぐ分からんかった! な、な、な、何でって、それは俺のセリフだよ」

 驚いた私が先に声をかけ、びっくりして言葉を戻して来たのは、となりのクラスの成瀬悠真(なるせゆうま)君。

 学校一のモテ男子、成瀬君は背がとっても高くてしょうゆ顔の超イケメン。
 髪サラサラ、清潔感にあふれてる。
 成績優秀(せいせきゆうしゅう)、野球を始めとしてスポーツ万能、硬派(こうは)その他もろもろ。
 あらゆるハイスペックさをかねそなえ、行く先々で女子たちからキャーキャー言われてる。
 (うわさ)では……芸能事務所(げいのうじむしょ)にスカウトされて断ったとか。
 誰かが、「某アイドルそっくりだ!」と言い切っていた。
 校内に私設(しせつ)ファンクラブもあるらしい。

 そんな成瀬君と出会ったのは、意外な場所?
 アニメとラノベの聖地『楽葉原(らくはばら)』でおこなわれていた、ある深夜(しんや)アニメのイベント会場だった。
 イベント内容は、アニメに出演している声優(せいゆう)さんたちのトークショーとミニライブ。
 そして……
 イベント終了後に、声優さんとの握手会(あくしゅかい)行列(ぎょうれつ)に並んだ私。
 
 ふと前を見るとどこかで見たようなうしろ姿(すがた)が。
 でもいきなり知らない人に「あの~」とか話しかけるなんて、ありえない。
 フツーは、絶対ないじゃない。

 列が進み、前の人が握手を終わって、ふりかえった瞬間(しゅんかん)、ばったり!
 って感じだった。

 びっくりし、あせりまくった私は、気もそぞろに声優さんと握手。
 「お~い、三島ぁ」手をふって、呼んでいた成瀬君と『合流』したって感じ。

 実はこのアニメ、すごくマニアックなんだ。
 放映(ほうえい)される局も少なくて……

 多分ウチのクラスにファンはゼロだ……と思う。
 
 だから成瀬君がいたのはすっごく意外。
 成瀬君がアニメを見る人なんてイメージもまったくなかった。
 だから、(ちょう)が付くサプライズだといってよいだろう。

 かくいう私は三島結(みしまゆい)
 14歳。
 中学2年生。
 いちおう青春まっただなか。

 彼氏いない歴14年。
 つまり男子とつきあったことはナッシング。

 顔立ちは普通(ふつう)……だと自分では思う。
 まったく自信がない。だから、普通なのだと信じたい。
 
 背は150㎝半ばで体型(たいけい)は、よくいえばスレンダー、あるいはやせっぽっち。
 成績は中の下、クラスでも目立たない女子。
 つまり私は乙女(おとめ)ゲームでいえば、その他大勢(たおおぜい)のモブ、地味な子、地味子(じみこ)

 さてさて話を戻そう。
 成瀬君との出会いは一番最初こそ、とまどった。

 なぜって?
 すっごく不思議(ふしぎ)じゃない?
 
 同じクラスではない、となりのクラスなのに、成瀬君は『モブで目立たない私』の事を知っていたのだ。
 だけど……あまり深く考えないようにしよう。 

 私と成瀬君は、顔こそお互い知っていた。
 けどほぼ初対面。
 でも大好きなアニメのファン同士(どうし)
 なら、打ちとけるのは超早かった。

 という事で、帰りにハンバーガー屋さんに不時着。
 コーヒーを飲みながら成瀬君と話した。

 ひっこみ思案(じあん)で、人見知りな私でも大好きなアニメネタなら、成瀬君のような男子とも話せるのだ。
 話はどんどん盛り上がった。

 いろいろ話して判明(はんめい)した。

 しょせん(うわさ)は噂。
 成瀬君が、女子に対しぶっきらぼうな硬派だという話は全く違った。
 
 彼は自分を(かざ)らず、誠実(せいじつ)
 ネガティブ発言をしない。
 細やかな気配(きくば)りもしてくれている。
 そして、笑顔(えがお)がさわやか。
 これが一番(いちばん)()に入った。

 成瀬君は、私といろいろ話せて《あくまでも、共通(きょうつう)のアニメネタだけど……》嬉しかったみたい。
 じっと私を見つめて来た。

「おい、三島。お前がここまでアニメ好きなんて、まったく知らんかった」

「それブーメラン。こっちのセリフ」

「あははは。 俺、三島とアニメの話してるとすっごく楽しい」

「うん、私もよ」

 私は正直に答えた。
 同じアニメのファン『同士(どうし)』だから。

「実は私、ラノベも大好きなんだけど」

「なんだ、三島も? 俺もラノベ大好きさ」

「あはは、意外! 成瀬君はアニメもラノベも興味(きょうみ)ナッシングっていう感じなのに」

「……なあ、三島。よかったら次のイベントもさ、いっしょにいかないか?」

 あれ?
 学校一のモテ男子から、いきなり誘われた。

 こんなこと言って、ぜいたくなようだけど……
 私は成瀬君を素敵(すてき)な男子だと思っていたが、アイドルスターのように(あこが)れてはいない。

 でも……
 『同士』からのおさそいを(ことわ)る理由もない。
 今日みたいにまた楽しく会話が出来るだろう。
 なので深い意味(いみ)もなく単純(たんじゅん)にOKした。

「いいよ!」

 ということで……
 これまでまったく「かかわりがなかった」私と成瀬君。
 モブで地味子な私と、超ハイスペック男子の仲は、意気投合(いきとうごう)した『アニメともだち』から始まったのである。
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