秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました

彼との記憶~あなたの恋人になりたい~

――二年と三カ月前、冬。


兄に隠れて涼晴と会うようになってもうすぐ一年、男女の関係になってからは三カ月が経とうとしている。

忙しかった仕事がひと段落した兄は、少し長めの正月休みをとった。

ひとりぼっちのお正月にならなくてよかった――と思う反面、兄がいるということは、涼晴に会う名目がないということ。

これまでは『ひとりの食事が寂しいから』と涼晴のもとに通っていたけれど、口実がなくなってしまったら、なんて言って押しかければいいのかわからない。

『会いたいから』なんて言ったら重い? 体は重ねてみたものの、恋人のように振る舞ったら、厚かましいと思われるかな。

その日の夜、私は兄に『友達と食事をしてくる』と嘘をついて、涼晴の部屋へ向かった。

少々うしろめたいけれど、こうでもしなければ涼晴とふたりきりの時間が確保できない。

あらかじめ行くと連絡しておいたからだろう、涼晴は近所にあるちょっぴりリッチなデリバリーで創作イタリアンを注文しておいてくれた。

「今日は、斗碧は仕事なの?」
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