偽りの夫婦
威圧
「紫龍様!お休みのところ、申し訳ありません!」
陽愛を一度自宅に送り再度エントランスに下りると、部下の吉野がエントランスで待っていて、頭を下げる。

「あぁ。
で?トラブルって?」
「◯◯ですが、やっぱり紫龍様のおっしゃってた通り、スパイでした……」
「あのオヤジ…やっぱり回し者か…!」
車に再び乗り込み、事務所に向かいながら、紫龍がため息をつく。

「えぇ、紫龍様のことを、やけに嗅ぎ回ってたみたいです」
「だろうな。まぁ、いいよ。でもどうやって地獄に落とそうかな~」
「え?」
「許されないよね…あのオヤジ…」
紫龍の雰囲気が黒く、重たくなる。

「紫龍様」
「ん?」
「逆にスパイとして送り込んではどうですか?
◯◯組の情報がはいりますよ」
「そうだね。でも…興味ない」
「え?」
「そんなことしなくても、いつでもどうにでもできるよ!あんな組」
フッと微笑む、紫龍。
その少し不気味な笑みに寒気を感じる、吉野だった。

事務所に入ると、
「若様。こちらが◯◯さんの持っていた持ち物です。
今、甲野さんが、色々聞き出しているそうです」
と、女性部下玉本が来る。
「ん」
と紫龍が持ち物を確認する。
「あと…これ、どうぞ」
と玉本がチョコレートを出す。
「は?」
「若様、いつもチョコレート食べながら、お仕事されているから」
紫龍は仕事中、糖分を体内に入れる為、チョコレートを食べながら仕事をしている。
激務で忙しい時は尚更。
「フ…」
上目遣いに玉本を見て微笑む、紫龍。
「////」
顔が赤くなる玉本。

「いらない」
「え…?」
「仕事の邪魔だから、もう出ていって!あとは俺がやるから、帰って!」
「え?でも……」
「いつも言ってるよな?俺は同じことを二回言わない」
そう言って、また資料に目を向けた紫龍だった。
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