偽りの夫婦
洗脳
「旦那様は、催眠術師になれますね。きっと…。
それとも、なにかの宗教の教祖とか」
と三好に言われたことがある。
「あなたが本気になれば、いくらでも思い通りに人間を動かせる」

陽愛と結婚してすぐに、三好に全ての事を伝えた紫龍。
三好に紫龍がいない時などの、監視をさせているのだ。

三好はただの家政婦ではない。
ちなみに三好は元々紫龍の事が好きで、ずっと…まるでストーカーのように付きまとっていた女だ。
それを紫龍が三好の好意を利用して巧みな話術で、洗脳して自分の思い通りになる、シモベのように造り上げたのだ。

それに紫龍の会社の幹部連中や組の部下も、全て紫龍の思い通りになる人間ばかりだ。

子どもの時から、紫龍には言葉で人を動かせるような話術があり、ある意味嘘をはくのもうまい。
嘘が嘘でなくなるような、言い方をするのだ。
だから相手も、まるで本当のことのように信じ込むのだ。
それでいて紫龍の瞳はオッドアイで、左右の色が違う。だから、この目に見つめられると何も考えられなくなり、何も言えなくなるのだ。
だから、陽愛にも普通に嘘を並べ立て、自分のモノにした。

「ケーキ、食べようか」
陽愛を食べさせた後、紫龍も食事をして声をかける。
「うん、じゃあコーヒー淹れるね」
席を立とうとする、陽愛。
「それは、三好の仕事でしょ?」
「あ、そっか。ごめんね…つい。
なかなか慣れなくて……家政婦さんがいる生活」
「ゆっくり慣れてくれたら、大丈夫だよ?俺と陽愛はこれからずっと一緒なんだから」
頭を撫でながら、フワッと微笑む。
「うん…」
陽愛も、微笑み返した。
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