身を引くはずが、一途な御曹司はママと息子を溺愛して離さない
息子が流した涙




 *

 それから柊一さんとは頻繁に連絡を取り合うようになった。

 彼が見たいというので冬真の写真や動画を送ったり、たまにだけど夜には電話もしたりしている。

 普段は柊一さんからかかってくることが多いけれど、今日は初めて私から電話をかけてみた。どうしても彼に確認したいことがあったのだ。

『もしもし』

 コール音が長く続いたあと、ようやく柊一さんが出てくれた。時刻は夜の九時。まだ会社にいて仕事をしているのだろうか。

「美桜です。今、お時間大丈夫ですか」
『ああ、大丈夫』

 そう答えた柊一さんの声のあとで焦ったような男性の声が遠くから聞こえた。

 なにを言っているのかまでは聞こえなかったものの、〝書類〟〝早く〟と急かすような単語だけは聞き取ることができる。もしかしたら近くに榊さんがいて、仕事の催促をしているのかもしれない。

 そうだとしたら電話をしている余裕がないのでは?

 けれど、柊一さんは気にせずのんびりとした口調で会話を進める。

『そうだ、美桜。チケット届いた?』
「はい。そのことでお電話しました」

 今日、自宅に帰ると柊一さんからの郵便物が届いていた。茶封筒に入れられていたのは一枚のチケット。

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