愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
はあはあと息が上がる。

ベッドに転がったまま、すべてのコトが終わって乱れた呼吸を整える。エッチをして肩で息をするなんて初めてのことで、呆然と天井を見つめた。

ふと日下さんに目をやると、俯いて両手で目を覆っていた。

「どうしたんですか?」

私は起き上がって日下さんの顔に手を伸ばした。頬が濡れていたからだ。

「ごめんなさい。やっぱり私、下手くそでしたか?」

「……いや」

「じゃあどうしてそんな悲しい顔をしているんですか?」

日下さんの目は涙で潤んで真っ赤で、困ったように眉が下がる。

「芽生」

ふいに腕が伸びてきて、私は日下さんにすっぽりと抱きしめられた。

「ごめん」

そう呟くと腕に力がこめられる。

日下さんはそれ以上何も言わず、しばらく静かに泣いていた。私は訳がわからなかったけれど、自分の腕を日下さんの背中へまわす。

「……大丈夫ですよ」

優しくなだめるように、ただ日下さんを抱きしめ返した。

密着する肌と肌はしっとりとあたたかかった。
< 17 / 104 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop