愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
散々甘やかされて私は日下さんの虜になる。それなのに、また何事もなかったように帰路に着いた。

モヤっとした感情は、一人になると少し冷静になって考えることができる。

連絡先も教えてくれないのはやはり結婚しているからで、証拠を残さないためなのだろうか。だけど日下さんは時間を気にする素振りも、携帯電話を取り出すこともない。ましてや今回は一泊して朝帰りになってしまった。それで大丈夫なの?

私の方が日下さんの家庭を心配してしまい結局罪悪感でいっぱいになるのに、それでも流されてしまう自分に自己嫌悪だ。

バシャバシャと冷たい水で顔を洗い、日下さんを好きだと思ってしまう自分を戒める。
ひんやりとした感覚は更に頭を冷静にさせた。

次はないから。
もう絶対流されない。
不倫は嫌だ。
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