愛することを忘れた彼の不器用な愛し方
謝らなくちゃいけなかったのに、事故の衝撃とバタバタですっかりと忘れていた。しかもまさか突然日下さんが訪ねてくるなんて思ってもみなかったから、気持ちが混乱する。

「日下さん。あの、先日は……」

「ごめん、芽生」

「え……?」

謝ろうとしたのに逆に謝られてしまい、私の頭はますます混乱する。

「俺はさ、弱くて情けなくて最低な男だよ。香苗のことが忘れられないし、芽生に迷惑ばかりかけてる」

”香苗”という言葉に私の体は自然と強ばる。日下さんが何を言おうとしているのかがわからず、私はただ黙って言葉の続きを待った。

日下さんも考えがまとまっていないのか、口を開きかけては悩むといったことを繰り返し、私は何を言われるのか不安でいっぱいになり胸が押し潰されそうだ。

「でも……」

日下さんはようやく言葉を発すると、まっすぐに私を見つめて言った。

「自分勝手だってわかってるけど、これからも芽生に側にいてほしい」

瞬間、ぶわっと体の芯が熱くなる。

私は日下さんに多くは求めない。
今はそれでいいと納得していたはずなのに。

“側にいてほしい”と言われることがこんなにも嬉しくてこんなにも泣きたくなるくらい感情が揺さぶられるなんて思ってもみなかった。
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