内緒の赤ちゃんごとエリート御曹司に最愛を刻まれました～極上シークレットベビー～

祐奈の苦悩

「祐奈さん、天沢ホテルの副社長ってどんな感じでした？」
　金曜日の昼下がりの宇月温泉観光案内所。
　客が一段落したのを見計らったように同僚の真由香に興味深々で問いかけられて、祐奈はどきりとしてパンフレットの整理をしていた手を止めた。
「……どうって？」
　戸惑いながら答えると、彼女は目を輝かせた。
「すっごく、すっごくイケメンだっていうじゃないですか!!　最近、観光課のお姉さま方はその話題でもちきりですよ。案内役、祐奈さんと交代したいって課長に直談判した人もいるくらいなんですから」
「そうなの!?」
　真由香の言葉に祐奈は驚いて声をあげた。
　仕事終わりに同僚と話したりする時間もなく保育園へ行かなくてはいけない祐奈は、だいたいいつも情報が遅い。
　それはいつものことなのだが、それにしてもびっくりだった。
　もちろん大雅が女性の目を引く存在だということはわかっている。かつて祐奈もフロント係として彼に出会った際、同じように感じたのだから。
　それにしても課長に直談判までするとは……穏やかじゃない。
「どうなんです？　イケメンでした？」
　そう言って真由香はわくわくして祐奈の返答を待っている。
　祐奈は苦笑しながら首を傾げた。
「どうかな、まぁ、確かに素敵だとは思うけど……」
　祐奈は曖昧に微笑んで、当たり障りのないことを言ってやり過ごそうとする。
　脳裏に二週間前の彼の姿が浮かんだ。